英語でドン滑ることに慣れ早5年。
恥じらいに関して不感症な平凡妻です。
渡英時はモフモフの犬っころメンタルを保持し、英語で躓いてもシッポ振って笑顔で切り抜けっゾ!だったのが今は無風のゴルゴ13。
通じなかったら恥ずかしいという弱虫メンタル。それを打ち破る勇気をくれたのは、名前も知らない人だった。
本日はその心温まる話です。
今からウン万年前、新しく移動した部署での仕事に平凡妻は病んでいました。
電車の椅子取りゲーム勝率を上げるのだけは上手くなるも、仕事は思うようにいかず完全に自信を失っていた日々。
ある日の夜は、ストレスから夕飯が喉を通らなくなり、でも何か食べなきゃ、でも明日も会社だから早く寝なきゃと時短術を考えた結果、夕食に焼いたサンマとご飯とお味噌汁をトレーに乗せ、お風呂の蓋の上にセットアップ←驚
深夜メソメソしながらお風呂場で晩餐するという奇行に出るも、洗い場で自分の痩せた胸元に焦げた魚の皮がくっついているのを発見して我に返ります。
「サンマァァァアア!!!」
怒りで風呂場で発狂。
サンマではなく、良いパフォーマンスを発揮できない自分の無能さに泣きじゃくりたくなり、消えてしまいたいとすら思いました。
翌日はいつものように匂いのしない冷たいコメの塊を女子トイレの便座に座りながら食べ、このままでは自分が壊れる、そうだ、今必要なのは癒しだ!会社帰りにマッサージにでも行こう!と自分を鼓舞して午後をやり過ごす。
お疲れさまでした、と蚊の鳴く声で挨拶したと同時に地下鉄に飛び乗り、スマホで、
楽しそうな人 来ない
マッサージ
de 検索かけたら一発ヒットしそうなお店(失礼)を適当にピックアップ。乗換駅で電話をかけたらトゥルッの1発で出た中国式マッサージにお世話になることに。
ネガティブ要素だけで入ったそこは、期待通りの寂れたお店でした。
受付を済ませ、中国人の青年にベッドに通され、彼のキガエ!オワル!ヨブ!の号令の後、入院患者のようなハッピと短パンに着替えます。
ベッドにうつ伏せになり、顔用の穴にストレスで荒れた肌を突っ込んで床を見つめると押し寄せてくるネガティブな感情。
どうして私の顔はこの穴がピッタリなの…?小顔マッサージ全然きいてないじゃん…なぜ佐藤さんは私にだけ挨拶を返してくれないのだろう…このハッピ臭い…社内査定もうすぐだけど、ミスが響いてるだろうなぁ…
とまだマッサージは始まっていないのにソッコーでネガティブ回想し始め自分を癒し始める客。
ハッピが臭い以外はこの店のせいではない。
回想中の平凡妻をよそに、
「イイネー!?」
とシャッとカーテンを開けて青年登場。
いやまだ返事してねぇし。
挨拶もすっ飛ばして全身60分をしっかりと迷いなくほぐし始める彼は日本語を話さないのだな、と理解し、店員さんとの会話が苦手な平凡妻は安心しました。
今日は誰とも話したくない。ただでさえ仕事で失敗して辛いのだから、店員さんとの会話で気疲れしたくない。
余計なことを考えると泣いてしまう。今はただ癒されたい。
そこに、
「カタ、コシ、アタマわるい」
コンマ5秒で空気を読まない発言。
頭が悪いのは知っとるわ!!無視しよ!寝たふりしよ!
そう思った時に彼が、かなり遠慮している声でダイジョブカ、ナイテルカ、テッシュ?と呟きました。
びっくりして答えないでいると、トントン、トントン、と肩を子供にするように軽く叩かれて、これは言葉の代わりに励ましてくれているのだ、と分かってからは我慢していたものが大人げなく溢れてしまって、もう駄目だ、絶対泣かない!と思っても、目頭がじわりとして苦しい。
おかしい。
恥ずかしい。
知らない人を前に泣くなんて、普段なら絶対にしない。お願い止まって、涙止まって!とぎゅっと目を瞑っても、もう熱い涙は意思とは逆行して流れてくる。
結局どうにもできなくなり、すいません、と腫れあがった目で起き上がりティッシュをお借りし鼻をかみました。
気まずい空気のまま、仕事が辛くて今日は来たこと、泣いてしまってごめんなさい、でももう大丈夫です、とボソボソと子供じみた泣いた言い訳を話しました。
すると彼も、自分も仕事を探して日本に来たこと、でも日本語が難しくて挫折した落ちこぼれの留学生なこと、本当は国へ帰りたいことなどを話してくれました。
「ガンバリスギ」
そう拙い日本語でポンっと肩を叩いて、ホラ、マッサージする、ネル、とぶっきらぼうにしながらも、
「ダイジョブ、ダイジョブ。」
そう言って、さっきよりずっと強い力で肩を揉んでくれるから、余計に胸がいっぱいになる。
おそらく彼は、入店したときから私の様子がおかしいことに気が付いていたのだと思います。
パワー強の指圧に苦しくなりながら、あーこれは揉み返しが来るやつだな…でもいいや。ありがとう。ありがとう。ありがとう。
そう心で呟いていたら、いつの間にか爆睡した。←極太な神経よ
施術が終わり着替えてお会計をした時には深夜12時を過ぎていて、早くいけ、電車がなくなるぞ、ほら、と飴を握らせてくれた彼の名前を最後まで聞くことはありませんでした。
雨が降る深夜の大都会でもらった優しい呪文は、ダイジョブダイジョブ、ガンバリスギ、の拙い日本語。
イギリスに来てアクセントのある英語を話す平凡妻は、もちろん英語で躓くことも未だにあるのですがその時にふと思い出すのです。
中国なまりの単語を羅列した彼の日本語が、いかにあの夜の私を助けてくれたか。
温度のある言葉は人を救うことがあること。その言葉の力は、上手い上手くないの枠を外れたところにあること。
自信がないまま話す英語が、もしかしたら誰かの一日を明るくしているかもしれない可能性は大いにあります。
何を書きたかったかと申しますと、平凡妻が仕事辛かった話でもなくマッサージ屋でメンヘラが爆発した話でもなく、外国人の言葉に助けられた話でした。
もしこれをお読みになっている方で、英語への苦手意識や緊張があることに辛くなっているならどうぞ。
ダイジョブダイジョブ、ガンバリスギ。
自信のないあなたの英語は、いつかきっと誰かを励ます。もしかしたら、もう誰かを明るくした事があるかもしれない。
これは平凡妻の、勇気が出るおまじない。
さぁ、本日も頑張っていきまっしょい!
※平凡妻の英語de珍事件はたくさんありますので、ぜひこの話を読み「こいつ超明るいアホじゃん」とハッピーな気持ちになって行ってください↓
コロナ世界で激ヒマだという方のメンタルリープにも良きです。
イギリスのChristmas Tombolaが分からなくて恥かいちゃったの巻。
さぁ、頑張っていきまっしょい!