海外で暮らしていると思いもよらぬ事態を招くことがままあります。日本にいても、「え~!知らなかった!」と目から鱗の情報が転がっていたりするものです。
そして、たまにそれに躓く。
本日は平凡妻がイギリスの保育士さんに息子への虐待の嫌疑をかけられたお話です。
息子は1歳5か月からイギリスの保育園に通っています。
階級社会のイギリスでは、園の雰囲気、親の職業、働く先生の雰囲気まで全て階級ごとにかなり変わります。
平凡妻はこだわりはなく、一番近いという理由でworking classの利用する保育園を選びました。
結果、マネージャーのChannel(シャネル)はバリタトゥー民の鼻ピ族。
風貌はバービー人形のまつ毛を5倍ボリュームにし、氷点下のクリスマス付近にもヘソ出しスパンコールキャミで出勤するギャル。
彼女と話すと「109ってまだあんのかな。」「新木場のクラブの名前何だっけ。」とつい渋谷へ脳内トリップし、クラブ・アゲハに思いを馳せさせるインパクト・ガールです。
日本のほんわかツインテールエプロン保育士さんのイメージとは一線を画しています。
平凡妻には妹がいるのですが、彼女は高校時代パラパラを踊りに渋谷のサークルに出入りし高校中退をするしないと親と揉めに揉めるトンデモ女でした。
深夜に人の家にタムロしアユだかアムロだかをガンガン流す迷惑行為を繰り返し補導され、日サロに放課後通いつめ家庭崩壊を起こしかけた張本人。
というわけで、ややギャルという存在に怯えておりました。
そんな彼女に呼び出されました。
二人で話したいことがある、と。
これは、上級スクールカーストヤンキーから「おいテメェ、ヤキいれっぞ」みたいな、放課後体育館裏に呼び出し的ストレスです。
(相手はだいぶ年下だけどビビる)
それに、保育園で息子に何か問題が起こったに違いありません。何かシリアスなことがあったに違いない、と覚悟して家を出ました。
「息子が他の子に手をだしてしまったのか。」
「まさかいじめられている、とか?」
「一番いやなのは息子がいじめている側だったらどうしよう。」
など、頭の中は心配でパンパン。
保育園に到着するとギャルマネに誘導され、他の保護者の目を遮るように事務室へ通されました。
ピリピリした空気を発しながら、切り出される会話。
「これはClearにしておかなければならないQuestionなの。」
「はっきり答えてくれる?最近、育児に悩んでいない?」
…いや、もう産まれてから毎日悩んでるがな。ナニ言っているのこのギャル?うん、悩んでる~悩まない日なんてナイッスよ、と答えます。
彼女の顔は真剣です。
「最近、accidentで息子さんがケガやアザを作ったりした?」
「そりゃあ…最近歩き始めたばかりだし転んだりはするよ。」
「…Which part??詳しく教えて。」
…やっべぇこれ、まさか虐待を疑われている…?と気が付いたのはあまりにもギャルマネの目が怖かったから。
え?何?何が言いたいの?はっきり聞いてくれないとわからない、と言うと彼女は言いずらそうに切り出しました。
「おしりにアザがあるわよね。」
「入園してからずっと消えてないわ。」
「最初はぶつけたのかと思ってた。」
「でもこんなに消えてないということは、治る前にまたケガをしたか…誰かがhitしているのかと先生はみんな考えているのよ…。」
「叩いたり、してないわよね?」
「No! I haven’t!」焦っておっきい声出た。
鬼ババアの自覚はありますが、ヒスって怒号くらいは飛ばすものの、愛する我が子をケツバットしたりはしません。
断じてしない。
夫は溺愛しても手を挙げるDV男ではない。
…???…!!!
…モウコハーン?
Oh それ 蒙古斑!!!
そう確信した途端、思わず笑いと共にツバ吹き出た。
我慢しようと思うもののもう止まらない笑い。
真剣に詰問したあげく意味が分からないジャパニーズワードのmoukohan?!を叫ばれ、ツバを飛ばしながら笑いが止まらない平凡妻を戸惑いながら見つめるギャルマネ。
「ゴメンなさい、ほ、本当にやってないわ…。」
なんとか笑いを納め、きちんと説明しなければ、とスマホを取り出します。
「All mongoloid babies have blue mark on their bottom.」みんなモンゴロイドはアザがあるのが普通、naturalなものであると説明します。
しかし「あなたモンゴル人じゃないじゃん。」とナナメ上の回答をされました。
だーかーらー、黄色人種というかまぁ東アジア人はあるんだってば!と言い直しました。
そして、白人やアフリカ系、インド系などの他人種の赤ちゃんはどうなの?と聞きました。
「ない。初めて見た。というかnaturalって本当??」と。
…まだ疑われている模様。
しゃーなしやな!困った時の4次元ポケット。
「OK Google!蒙古斑の写真を見せて!」トゥルン♪
無言で2人で平凡妻のスマホ画面を見つめます。
出るわ出るわ赤子のオケツ写真のオンパレード。そこに映し出される多種多様の蒙古斑たち。
思わず息子と似たオシリ写真を見つけ、指でスワイプして拡大し、あーこの子のは青くて大きいわね…と感想を言い合います。
いい大人が二人して他人のオシリ画像を拡大している絵がシュール過ぎて、どちらからともなく笑いだしました。
「もういいわ。スマホしまって。疑ってごめんね。」
「はっきり聞けて良かったわ。他の先生には私から説明しておく。」
と頼もしい言葉を賜りました。
…良かったぜ。焦りましたがGoogleの画像検索に助けられ事なきを得ました。そして、オケツ写真を通じてギャルマネと確かに心は繋がりました。
イギリスの田舎のナーサリーではそもそも外国人児童が珍しく、日本人のこどもを受け入れたのは息子が初めてだったとのこと。
平凡妻は蒙古斑が他人種にはないことを知らず、あちらは蒙古斑の存在自体を知らずに誤解がbornした次第です。
結構なビッグ・マター。
知らないって怖いですね。
そして、平凡妻と息子はこのギャルマネに大変お世話になり良い園生活を送れました。感謝しかありません。
ギャルには苦手意識が拭えなかったものの、シャネルのおかげでギャルの好感度は爆アゲです。
思い返せば、ギャルギャルしい友人のほうが仲良かったりしました。久しくギャルと触れ合ってなかったので忘れとった。
それに、私への虐待の疑いに切り込んでくれたその勇気こそ、彼女の仕事への熱意や息子への愛を感じました。
彼女のような先生が子供の安全を守るのです。ありがとう。
人は見た目じゃないな。怖がってごめん。
というわけで、海外で育児される場合は蒙古斑の説明は入園前に済ませておきましょう。
平凡妻のように、頑張って育児しているところにあらぬ誤解を生まぬようご注意下さい。
蒙古斑は英語でMongolian Blue Spotです!一生忘れません。
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