前回のコラム記事「海外生活で母親に向いていないと気付いた。」で私の育児の闇話を吐露したところ、たくさんの方々から励ましや優しいお言葉を頂きました。
ひとつひとつ、噛みしめながら読みました。辛かった気持ちが救われました。ありがとうございます。
「アッパラパーな奴だと思っていたのに意外と抱えてたんだな。まぁ頑張れよ。」と心で呟いてくださったイケメンハートな方にも感謝しております。
んで何が起こったのかというとですね、皆様の優しさに平凡妻の鉄壁の涙腺は崩壊しました。色々な感情が混ざった涙の濁流です。
5年間、誰にも打ち明けられなかったものをブチまけたら止まらず、流れる涙を指で受け止めました。
そう、マイ・フィンガーズで全力で受け止めた。したらできたよね。
小豆サイズのメバチコ。
メバチコ、すなわち、ものもらい。
どのくらい重症かと申しますと I can’t open my left eye at all.
腫れあがった瞼の重みで左目は開かないし、痛みにコラえて全力で目を開けようとしても黒目のフチまで瞼が届かないからそもそも見えない。
「病院行けよ。」そうおっしゃるでしょう日本にお住まいでしたら。
イギリスで病院にかかりたい場合、GP(General Practitioner)という総合診療所にかかります。簡単にいえば、日本のように耳鼻科、内科、外科など直行で専門医には見てもらえません。
ものもらいも骨折も手足口病も火傷もGPです。
そしてGPは医療レベルも高いとは言えず、おまけに予約必須なので具合が悪くても診てもらえるのは一週間先というのはザラ。
つまりないものと思え、病院は。
仕方がなく今朝は小雨の降るなか、Chemist(薬局。イギリス英語ではケミストです。)に行き、効きそうな薬を買いにでかけました。
道行くなか、平凡妻の顔を見ないようなフリをしながらガン見してくるイギリス人達。痛い視線を浴びながら店内をくぐり抜け、やっとたどり着いた薬局。
左目が潰れたノラ猫のようなグチュグチュ目の、小雨ゆえロッチ中岡のようなクセ毛ボンバイェの私に薬局のオバチャンは冷たく言い放ちました。
「All you can do is…just wait.」
冗談でしょ…!?あるだろ薬ぐらい。ココ、イギリス、センシンコク、イェ?
コウセイブシツくれなんて言いません。目薬!!
手近にあった目薬コーナーでひとつひとつ手に取り、諦めずに聞きます。
「How about…this one? Do you think it works for a stye!? ねッ!?」
※styeは英語でものもらい
もう何とか英語で話してはいるけれど力が入りすぎて日本語も混ざってしまう有様。ねッ!?て言われても分かるはずないですよでも言っちゃう。
しつこいなこのノラ猫野郎、という顔をされました。
でもゼッタイ諦めない!!
「so…Do you think I could get any medicines if I asked a doctor at GP…?」
GPのドクターに処方箋をもらえば薬があるのか、ともう半泣き。泣くと涙でドチャクソ目がかゆい&痛いですが、ンなこと言っている場合ではないのです。
「No. Normally GP don’t do for a stye.」
「ものもらいで薬は出ません。温めれば治るよ。」
…当方、ホメオパシーや自然治癒に興味はありません。薬をブッ込んでさっさと治したい派です。しかし叶いません。
マジで待つしかないの?こんなに目がヤバイ状態なら、恐らく完治まで2~3週間かかりそうです。
乙女がこの顔で過ごさなければならないのは耐え難い苦しみです。平凡妻は平常時の顔面でようやく人並みなのに!!
仕方がなくアイボン的な洗浄液だけ買って薬局を後にしました。
その後、小雨が降るなか向かったのはオシャレなカフェ。前々から友人たちと「子供をスクールに送ったあと一緒に朝ごはんを食べよう。」と約束していたのです。
「薬局のオバチャンにも振られたしGPもダメって言われたけど、いい薬とか教えてくれるかも。」
「イギリスで困ったらイギリス人に聞くのが一番よね!」
と気持ちを切り替えます。
到着しドアを開けると、店員さんにややギョッとされながらも親切に席に案内されました。
久々に見る友人たちは皆元気そうです。いつもの挨拶を交わし他愛のないおしゃべりに花を咲かせる私たち4人。
…んん??
…さっきから誰もこの目ん玉の話題に触れないんですが??
自分から会話にショーットカットし、「この目はね!これこれこーゆー理由でぇ!」と鼻息荒く説明するのも、まるで自分が本日は特段にブサい言い訳を並べるようで好ましくありません。
友人3人も明らかに気が付いているはず(だって店員さんはギョッとしてた!)なのに、優しさゆえか、はたまた人の見た目の話題に触れるのはエチケット上よろしくないと考えるイギリス人の常識なのかは分かりませんが、とにかくスルー。
ようやく朝ごはんのメニューの黒板ボード(店内レジ上に立てつけてあり遠くてよく見えない。)を一緒に眺めていた時にチャンスがやって来ました。
「Are you ready to order?」
ハーイ!!そもそも読めねぇから黒板。レディーできないよ、だって目が開いてないんだモン!!
「ものもらいができちゃってコンタクトが入れられないし読めない。読んでくれる?」とようやくブサい言い訳を述べます。
「OK, トーストとエッグベネディクトと~…etc.」
「Thanks. ねぇ。イギリス人ってものもらいできたらどうすんの?GP?」
すると友人たちは朗らかに言いました。
「ケミストよ!!」
…Really? レ、レアリーーー?!
イギリス人3人の文殊の知恵を集めても「Chemistに行け。」しかない解決策。
(先ほどの薬局の目薬はドライアイ用しか置いていなかった。)
Amazonでstye用の目薬を探しても、ドイツから配送でイギリスまでお届けに3週間。
まとめますと、イギリスに住む方は絶対に目をこすってはいけません。
どんなに悲しかろうと悔しかろうと泣いてもいいけど目は擦るな。
いいですか、目は擦るな在英邦人。ノラ猫顔になりたくなければこの言いつけだけは守るのです。
「目は擦るな。」
※GPは急患だと伝えると配慮してくれる場合もあります。また、地域には急患を受け付けてくれる24h体制の救急病院もちゃんとあります。イギリスにいらっしゃる方、安心してください。
イギリスの片田舎で片目がグチュってるクセ毛のロッチ中岡さんに似た女性を見かけたら、ぜひ効く目薬を恵んであげてください。
それは200%、ワタクシです。